能楽鑑賞 青山銕仙会@オモサン

いよいよ夏も本格化してきて、ようやく七月がやってきました。この七月の訪れを「ようやく」というべきか「もう」というべきかは微妙なところではありますが、私にとっては「ようやく」です。あと一月で夏学期も終わってしまうわけです。

東京大学編入試験からちょうど一年が経過したのが今日という日なわけです。そして平成19年7月1日、すなわち「今日」、再び東大工学部の編入試験(一次筆記試験)が行われました。今回は志望者が100人を超えているとかどうとか……

先週の個人的なイベントは以下の通りでした。

今回は6月27日(水)の能楽鑑賞の感想を書きたいと思います。この記事を基にして感想文を仕上げて提出する、という魂胆です。

場所やら交通アクセスやらは後回しにするとして、とりあえず内容についての感想を書くことにします。以前、水道橋で見た「雲雀山」は不覚にも寝てしまったのですが、今回は1限をブッチして十分な睡眠をとり、事前に内容を吟味して予習しておいたので、しっかりと最後まで見ることができました。その予習の成果が下の図です。これを頭に入れておいたので、能の表現そのものを堪能することが出来ました。

海人予習

下の画像は今回の能のキャスティングです。能楽師の名前や演技の性質やらを語れるほどには能をまだ見ていないので、コメントもできないのが残念ですね。

銕仙会案内

高い音の笛、軽快に鳴る鼓、威勢の良い掛け声とともに、最初は四人の能楽師が舞台に出てきました。子方の房前大臣(金色の烏帽子・衣装)、ワキの従者(黄土色の衣装)、ワキツレの従者2人(黒っぽい衣装)でした。

今回の能で私が注目していたのが「楽器」でした。すなわち笛と鼓です。というのも、上歌でワキとワキツレが台詞を話していたときの小鼓と大鼓がやけにリズミカルに感じたからでした。

さて、四人が志度の浦に至ったのち、シテの海人(白っぽい水色のボリューム感ある衣装、鎌と海松布を持っていた)が舞台に入ってきて、場面が移り変わりました。このとき印象的だったのが笛の音色でした。「ヨ〜〜〜〜イ」と「振動するような声」の掛け声も印象的でした。

こういった掛け声と笛の音によって、海人のもつ不思議さとか儚さといったものを表現しようとしていたのでしょう。ですからその瞬間、「もしもサイレントムービーで能を見たら、さぞ下らないものになってしまうだろうな」などと考えていました。

「海人」で最も重要なパートは玉之段です。玉之段はスピーディーに進行しましたが、主観的継続時間は非常に長いように思いました。それほどまでに「引き込まれるようなもの」があの空間にはあったと思います。シテの一挙手一投足に観客席の誰もが傾注していました。舞台を強く踏みつけたときに発せられる足踏み音も稲妻のように感じられるほどでした。

玉之段での地謡と共に盛大に盛り上がるリズミカルな鼓の演奏にはかなりの迫力がありました。それは海人の飛んだり跳ねたりという激しい動きに一層の躍動感を与え、シテの演舞から能楽師の魂というものを観客に感じさせる効果をも生み出していたように感じました。

だからこそ、玉之段終了直後のシテによるクドキが始まったときは、異常なほどに静かで、主観的には心臓の鼓動音までしっかり聞き取れそうなほどでした。その後、アイの浦の者(青い衣装)による伝説語りの間も、鼓や笛は床に置かれて、非常に静かに淡々と噺が進んでいきました。

少し会場に「飽き」のムードが漂い始めてきていたとき、出端の囃子に入り、後シテの竜女(真っ赤な衣装、長い髪、白い面)が登場すると、場の雰囲気が一転しました。太鼓、大鼓、小鼓、笛のすべての楽器が演奏され、力強い囃子の中で竜女の舞が始まりました。

玉之段のときですら、太鼓は封印されていましたから、ここで完全に四つすべての楽器が使われたというのは圧巻でした。これまでの舞台全体を通じて最もパワフルな囃子の中で、鼓の音が熱い鼓動のように響き、あまりにも強い笛の音が場を支配していました。

それゆえに、竜女の舞は、玉之段での海人の舞を上回るほどエネルギーに満ち満ちていて、見ている我々を惹きつけてやみませんでした。このとき、私は見知らぬはずのシテの能楽師の方に対し、畏怖の念すら抱いていました。

配られてあったプリントに記載されている演出と、実際に見た銕仙会の舞台とを比べると、台詞が一部省略されて細部では若干違いました。そういった違いを見つけながら演出を楽しむことができたのは、私にとって小さくない収穫でした(それほど集中して能を見ることができたという証明なので)。

そもそもこの講義を選択したのは、日本人としては能楽、文楽、狂言、歌舞伎といった伝統芸能は押さえておきたいという気持ちがあったからです。この青山での能鑑賞は、私の人生で初めて「ああ、自分はちゃんと能楽を見たんだ!」と実感できるものとなりました。これだけでも演劇論Iなる科目を(仮に単位を落としたとしても)履修した意味があったというものです。

授業で要請されて能楽鑑賞に行く、というのは今回で最後ですが、これからの長い人生の中で今後は自発的に能を見に行くように努力していければ幸いです。


場所についてですが、これが表参道だったんですけど、どうにも私には場違いでしたね。原宿の竹下通りはできれば近寄りたくない場所に認定していましたが、表参道もちょっと近づきにくかったです。

銕仙会地図

銕仙会の目の前はプラダでしたし。おかげでさらに場違い度が増しました。

プラダ


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